2016年4月25日
市販の食品のパッケージに表示されている栄養成分表示や消費期限や賞味期限の表示。こうした食品の成分分析や安全性の試験測定を行い、依頼主にデータを提供している日本最大の機関が一般財団法人日本食品分析センター。今回は、大阪府にある同センター 彩都研究所 衛生化学部無機分析課課長(※)の吉村健一様にお話を聞きました。
※役職は取材当時のものです。
分析機器の使い分けと
それぞれのメリット
同センターの無機分析課では、ICP-OES以外にもアジレント製品を複数導入し、案件ごとに使い分けています。
「案件ごとの測定元素、測定試料濃度、期待される感度などにより測定装置を使い分けています。たとえば、高濃度の場合はフレーム原子吸光分光光度計やICP-OESを用い、低濃度の場合はICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を用いて分析を行っています。
一斉分析の場合は、ICP-OESやICP-MSを使っていますが、試料の成分の干渉によっては、フレーム原子吸光分光光度計、ICP-OES、ICP-MSを使い分けています」
さらに、それぞれの機器の利点については次のように語っています。
「当センターでは栄養表示が施行される 20 年以上前に、フレーム原子吸光分光光度計の導入を検討しました。栄養表示施行に伴い、ナトリウム分析の増加が予想されていましたので、装置の信頼性とともに自動化が重要な要求ポイントでした。アジレント(当時はバリアン。同社は 2010 年にアジレントが統合)のフレーム原子吸光分光光度計は、アクセサリーのSPS-5オートサンプラーとダイリュータが使えることで、あらかじめ試料の自動希釈が行え、そのまま測定できることが大きなメリットでした。最初はAA-640を導入し、その後AA-800、AA-220、AA-240FS などを順次導入しました」
「ICP-OESについては、ラディアル専用機(735ES)とデュアル測定対応機(5100 ICP-OES)を各1台保有しています。測定対象によって測定溶液中の共存元素の種類、含有量もさまざまなため、案件ごとに装置を使い分け、測定精度を優先した分析を心がけています。原子吸光分光光度計と共通のアクセサリーがあることや、分析時間が短く、分析精度が高いため、非常に満足しています。」
ラディアル専用機 735ES
ICP-OES Agilent 5100
「ICP-MSは、7500ceと7900を各 1 台保有しています。ICP-MS単独の精度・感度もよいですが、形態別分析を行う際に用いるHPLCとの相性(コントロール性、流量)がよいことをメリットとして感じています。食品中の無機ヒ素の分析試験が増加しており、HPLCとICP-MSを組み合わせて使う機会が増えています」
さらに、吉村さんはアジレント・テクノロジーのアフターサービスにもメリットを感じています。
「導入後数年は点検サービスだけを依頼し、それ以降に有料の保守契約を結べるという柔軟な対応は当センターの使い方に合っていると思います。また、スタッフのトレーニングを部内だけで行うには限界があるため、有料のトレーニングも有効に活用しています。分析試験やメンテナンスに必要な知識や技量を短期間に習得でき、非常に助かっています」
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