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貴金属のリサイクル技術で世界をリードする ~田中貴金属工業株式会社~ (2/3)

2016年9月23日

円高になると俄然注目されるのが、安定した資産としての金への投資。金は古来より資産価値のある貴金属として重宝されてきました。この金を初めとする貴金属がコンピューターなどの先端産業でも注目されるようになったのは、「産業の米」と呼ばれる半導体に「金」のボンディングワイヤー(極細線)が使われるようになったことも大きな要因です。このボンディングワイヤーで世界トップシェアを誇る田中貴金属工業株式会社湘南工場を訪ねました。

高機能ICP-OESで
化学分析を効率化

田中貴金属工業には7つの国内工場がありますが、リサイクル回収を行っているのは、湘南工場と市川工場の2つ。湘南工場では金と銀、市川工場では主に白金族(プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムの回収・精製を行っております。

「2014年の湘南工場の実績では、金約30トン、銀約90トンをリサイクルしました。我々の所属する分析セクションでは、お客様から持ち込まれたサンプルを予備分析によって含まれる成分を把握したうえで最適な化学分析手法を選択し、貴金属の含有率を分析しています」(中庭さん)

分析セクションの業務内容は下記の3点で、このうち、(1) がメインの業務となります。

  1. お客様からお預かりしている回収依頼品中の貴金属含有率の分析
  2. 精製後の貴金属純度保証のための微量不純物分析
  3. メッキ液等各種製品における規格合否判定分析

田中貴金属工業株式会社
化学回収カンパニー
湘南工場分析セクション マネージャー
土谷剛照さん

「お客様からサンプルが持ち込まれた時点で、どのような貴金属が含まれているかをおおまかに把握する分析が“予備分析”です。お客様もおおよそのことはわかっている場合がほとんどですが、まったくわからないことや、時には予想外の成分が入っていたりすることもあり、この予備分析の結果で、その後の化学分析で、どの手法で分析するかを判断します」(土谷さん)

化学分析には、灰吹き法、ドライアッセイ、抽出法など、さまざまな分析方法があります。さまざまな試薬を用い、貴金属を分離精製し、その質量を測定することがその目的です。  

サンプルの持ち込みから分析結果までは、2~7日間と非常に短期での提出が求められます。このため、さまざまある化学分析の中から、どの手法で分析するかを決めることが非常に大切になります。

「分析の主体は化学分析になりますが、最初におおよその含有成分を把握するためのスクリーニングに、アジレント・テクノロジーのAgilent 725 ICP-OES、Agilent 5100 ICP-OESを使用し、誘導結合プラズマ発光分光分析法で、どのような貴金属が含まれているか、また化学分析を行う際に妨害になる成分が含まれていないかの分析を行う必要があります」(中庭さん)

分析するサンプル数は1か月に6000~7000(1日約300前後)にも及びます。これらをまず、液体と固体に分け、液体についてはAgilent 725 ICP-OES、Agilent 5100 ICP-OESで分析、固体についてはX線予備分析によりスクリーニングします。

サンプルの取り込みを迅速に行うことができるAgilent SVS 2+ スイッチングバルブシステム。

「アジレントのICP-OESは、それ自体の分析時間も短いのですが、オプションでAgilent SVS 2+ スイッチングバルブシステムを組み込んでおり、これにより従来よりも予備分析の時間が4分の1以下になりました。従来は1サンプルあたり4分ほどかかりましたが、現在は1分以下です。従来は1日がかりだった予備分析が午前中に終わるようになりました」(土谷さん)

化学分析をスタートする時間が早くなっただけでなく、分析の方針も早く決められるため、スケジューリングや人員配置も柔軟になり、残業も大幅に削減されたそうです。ちなみにAgilent SVS 2+ スイッチングバルブシステムは、革新的なサンプル導入システムで、あるサンプルと次のサンプルの間に必要な洗浄の時間を大幅に短縮し、サンプルの取り込みを迅速に行うことができます。 

「化学分析の中には長時間の反応が必要な工程もあり、夕方からこうした分析をスタートさせなければならないため、3年前までは日勤と夜勤の二交替制を取っていたのですが、現在はこうした作業を昼過ぎにはスタートできるため、夜勤の必要がなくなり、勤務は日勤だけとなりました」(土谷さん)

業務体制を変えるまでの大きな改革ができた要因の1つは、Agilent 725 ICP-OES、Agilent 5100 ICP-OESの導入にあったと言えそうです。