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2024年10月31日

四国化成工業株式会社は、その企業理念である「独創力」を存分に発揮し、ニッチながらも私たちの生活に欠かせない高付加価値の技術や製品を多々有する化学メーカーです。同社のファインケミカル事業では、現在、電子材料や半導体材料の開発を強化しています。この分野における元素分析について、同社 研究開発本部 機能材料開発部 武田 琢磨 氏、研究開発本部 電子化学材料開発部 石川 智子 氏に話を伺いました。

 

四国化成工業株式会社 研究開発本部 石川 智子 氏(左)、 武田 琢磨 氏(右)

四国化成工業株式会社は、1947年、化学繊維であるレーヨンの原料の1つ、二硫化炭素の革新的な製造法を確立したことを皮切りに、化学メーカーとして事業をスタートしました。その技術から派生したり新規に事業参入したりすることで事業分野を拡大し、現在、四国化成グループ全体としては化学品事業と建材事業の二本柱で事業展開中です。化学品としては、ラジアルタイヤに欠かせないゴム加硫剤である不溶性硫黄「ミュークロン」やプール用殺菌・消毒剤である塩素化イソシアヌル酸「ネオクロール」、エポキシ樹脂の硬化剤・硬化促進剤であるイミダゾール「キュアゾール」を提供しているほか、建材としては、住宅、商業施設、公共施設で使われる内装材、外装材、舗装材、さらにはアコーディオン門扉、カーポート、木質樹脂デッキなどを提供しており、私たちもどこかで四国化成グループの製品にお世話になっているかもしれません。

四国化成工業が関わる化学品のなかには、世界中の最先端技術に貢献している製品もあります。いわゆる、ファインケミカルの分野の製品です。たとえば、プリント配線板向けの耐熱型水溶性防錆剤「タフエース」は世界的に高いシェアを有しています。また、プリント配線板上の銅と樹脂の密着性を化学的に向上させる表面処理システムの「GliCAP」も実用化しました。

ここ数年、同社が未来を見据えて力を入れているのが電子部品や半導体向けの材料です。武田氏は、「『GliCAP』は半導体製造プロセスで使用される薬剤でもあります。これに加えて、有機合成の技術を生かして、最先端電子材料向け樹脂改質剤や半導体材料の開発も進めています。半導体の微細化・集積化が絶えず進んでいますが、それを実現するために、お客様である半導体関連メーカーからは新たな材料を求められます。そのニーズにあった材料の開発に取り組んでいます。」と話します。

 

半導体関連における極微量金属分析

電気特性や信頼性への悪影響を抑えるため、半導体材料中の金属不純物はできる限り少ない量に管理する必要があります。その量はppb(10の-9乗)未満とも言われます。四国化成工業でも各工程で厳密な管理を行っており、プロセス全体で ppbレベルの金属管理を行っています。そして、微量金属を測定する目的で、2018年に導入されたのが、アジレント・テクノロジーのトリプル四重極ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)「Agilent 8900 トリプル四重極ICP-MS」です。

各工程で金属の混入を厳密に管理(図中の「ICP-MS/MS」は、「トリプル四重極ICP-MS」と同義)

 

同社の他部門では既にシングル四重極ICP-MSを使用していましたが、事業拡大を目指していた最先端の半導体材料向けとしては技術的なブレークスルーが必要でした。半導体業界では、既存のシングル四重極ICP-MSでは値を保証しきれない領域まで微量金属分析のニーズが進んでいたからです。そこで、研究開発本部として最新の装置を導入し、最先端分野に対応できるシステムを構築する必要がありました。武田氏は、「半導体業界の当社のお客様もアジレントのトリプル四重極ICP-MSを使用して微量金属を分析しています。同じ条件で分析値を提供するには同じ装置が必要ですし、アジレントのトリプル四重極ICP-MSを持っているという事実が、当社が半導体材料に本気で取り組んでいる証にもなります」と、選定時の状況を振り返ります。アジレントの営業担当者から説明を受けたり、デモを見学したりした結果、アジレントのトリプル四重極ICP-MSには利点があり、他の選択肢は考えられないと判断。「Agilent 8900」を導入しました。

武田氏(左)と、半導体材料の分析で活躍するAgilent 8900 トリプル四重極ICP-MS(右)

 

 

「Agilent 8900」を導入して武田氏が感じたのは、ソフトウェアも分かりやすく誰でも簡単に使える装置だが、使えば使うほど奥が深いということでした。当初はお客様のサンプルにあわせた最適な条件設定にも頭を悩ませました。その時に役立ったのが、アジレントの技術者が提供する知識やノウハウだったと言います。「トレーニングに来た担当者と、その後も密に連絡を取ることができ、気軽に質問することができます。分からない点を教えてもらいながら、自分がレベルアップできる点が気に入っています」と武田氏は話します。

半導体材料に含まれる金属元素はごく微量であり、かつトリプル四重極ICP-MSでは極微量金属元素を測定することが可能です。前処理などの測定者の技量によってはコンタミネーションが生じ、信頼のおける測定結果が得られているのか心配になることもありました。ここでもアジレントのエンジニアが持つ知識や経験に頼りました。「アジレントのICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を導入した際に、通常よりも長い日数のトレーニングをお願いしました。一般的な説明ではなく、当社のサンプルにあわせて装置の使い方を説明してくれるのが役立ちます。また、前処理やコンタミネーションに対する考え方や、数値に対する考え方についての講義を含めてもらいました。こういった機会は他にはほとんどありません。このような要望に対応したトレーニングを提供してもらえるのは魅力的です」と武田氏は話します。

半導体業界向けのビジネスに本気で取り組むために導入した「Agilent 8900」。導入後、お客様からの評判は変わったのでしょうか。武田氏は「変わらない」と断言します。武田氏のこの答えは、投資が無駄だったことを意味するのではありません。「半導体業界のお客様は『トリプル四重極ICP-MSは持っていて当然』と考えています。持っていることで当社の評判が変わることはありませんが、この装置がなければ受注できなかったプロジェクトもありました。」と武田氏は話します。

ユーザーにやさしい機能と、迅速で手厚いサポート

同社が世界的にも高いシェアを誇る耐熱型水溶性防錆剤「タフエース」では、研究や製造において、溶液中に含まれる金属イオンを測定する必要があります。この測定には、長年ICP-OESが用いられてきましたが、2022年からは「Agilent 5800 ICP-OES」が使用されています。「Agilent 8900」導入時のトレーニングの充実や、障害発生時のエンジニアの訪問の早さなどを実感していたことから、新たなICP-OES選定にあたってアジレントの装置が候補に入るのは自然な流れでした。デモ用のサンプルを測定した際の精度の高さも確認したうえで、「Agilent 5800」の導入を決定しました。近年、同社 研究開発本部では、様々な研究テーマで元素分析のニーズが高まり、1台では研究者のニーズを賄いきれなくなりました。そこで、2024年にもう1台、追加で導入し、現在は2台体制で運用しています。

 

 

Agilent 5800 ICP-OESを2台体制で運用

 

使用して感じるのは、「とにかく測定が速く、測定時間が短い」(石川氏)こと。これに加えて、メンテナンスのしやすさも大きなメリットだと感じています。「メンテナンスの動画が装置に入っているので、触ったことのないところであってもどのように取り外してメンテナンスをすればよいのか簡単に理解できます。このほか、ネブライザのつまりを知らせてくれたり、各箇所のメンテナンスの時期も表示されたりするので、『やさしいな』と思います」(石川氏)。さらに、分析結果の表示の見やすさや、IntelliQuantソフトウェアによる高速半定量分析なども利点として挙げています。

IntelliQuantによる高速半定量分析の結果表示

「導入時のトレーニングで詳細を説明してくれたり、当社にとって使いやすいメソッドを提供してくれたりもしました。また、コールセンターの対応が速く、通常使用における一般的な相談であれば、半日程度で解決することが多いです。こちらの事情を理解し、必要なときには時間外でも連絡をいただけることもあります。そして、誰が電話に出てもこれまでの経緯を把握しており、話がスムーズに進みます。」と石川氏は話します。武田氏も、「アジレントのエンジニアは熱心に話を聞いてくれるし、分からないことを質問すると喜んで答えてくれます。自社の装置が好きなんだというのが伝わってくるほどです」と言います。

 

Challenge 1000:一歩先行く提案型企業を目指して

四国化成のグループ長期ビジョン「Challenge 1000」では、「独創力で、“一歩先行く提案”型企業へ」という2030年にありたい姿とともに、2029年12月期に売上高1000億円を達成するという目標が示されています。この目標達成にあたって化学品事業、とりわけファインケミカル事業には大きな期待が寄せられています。実際、半導体分野等のファインケミカル製品の開発・生産を目的とした新プラントに大きな投資を行いました。低金属管理など、高い品質管理に対応した設備を持つこの新プラントは2021年7月に稼働を開始しました。武田氏は「最先端の半導体材料にどんどん使用していただけるように、さらに新製品の開発を進めていきたい。」と締めくくりました。二硫化炭素の革新的な製法からスタートした四国化成工業。今後も、独創力を発揮して、地球、ひと、暮らしに好循環をもたらさんとしています。

最先端材料の需要拡大を見込み新設された新プラントが、2021年7月から稼働開始。

四国化成工業株式会社

本店所在地:香川県丸亀市土器町東八丁目537番地1

創立:2022年(グループとしての創業は1947年)

事業概要:各種化学工業薬品、医薬品、医薬部外品、化学肥料、農薬の研究開発、製造、加工及び販売

 

 

DE-002330

 

 

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