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お客様紹介:オリゴ核酸のスペシャリストとして核酸医薬の発展を支える――味の素バイオファーマサービス 株式会社ジーンデザイン

2021年10月27日

低分子医薬品、抗体医薬品につづく次世代医薬品として知られる「核酸医薬」。これまで治療が難しかった遺伝性疾患や難治性疾患を根治できる可能性があるとして注目されています。この核酸医薬に用いられるのが、「オリゴ核酸」です。

オリゴ核酸領域のスペシャリストである味の素バイオファーマサービス 株式会社ジーンデザインは、核酸医薬の原薬や研究開発用材料となるオリゴ核酸の開発・製造を手掛け、核酸医薬の発展を支えています。今回は同社研究開発部 南海 浩一 氏、斎藤 恵美 氏に、オリゴ核酸の製造・研究開発現場の分析技術の詳細や核酸医薬の展望についてお聞きしました。

左から 南海 浩一氏(研究開発部 部長)、片岡 範康 氏(代表取締役 社長)、斎藤 恵美 氏(研究開発部 課長)

 

幅広い用途をカバーするオリゴ核酸の製造・供給体制を構築

核酸医薬の研究開発がいま、世界的な盛り上がりをみせています。核酸医薬は文字どおり、DNAやRNAといった核酸を基本骨格とする医薬品で、代表的な手法に、核酸の投与によって遺伝子発現を調節するアンチセンスやsiRNA、標的タンパク質に核酸を結合させてその機能を阻害するアプタマーなどがあります。この核酸医薬の主成分となるのが、オリゴ核酸です。

オリゴ核酸は、核酸が数個〜百数十個程度連なった医薬品で、特徴として化学合成で製造されることがあげられます。低分子医薬や抗体医薬では標的とすることができないような遺伝物質を創薬ターゲットとすることができるため、これまで治療が困難とされていた疾患に対する医薬品の創出につながるものとして期待されています。

オリゴ核酸の製造・供給という立場から核酸医薬の発展を支えているのが、ジーンデザインです。同社は、研究用核酸材料の受託合成を手掛けるバイオベンチャーとして2000年12月に設立。大学や研究機関とも連携し、事業を展開してきました。2016年に味の素株式会社の傘下となってからは、ジーンデザインが培ってきた固相合成による少量多品種のオリゴ核酸の生産体制に加え、味の素の強みである大量生産に優れた液相合成法をベースとしたオリゴ核酸の製造体制を組み合わせることで、核酸医薬の開発初期から後期・上市後の大量供給に至るまでをカバーするオリゴ核酸の受託開発・製造事業における盤石な体制を構築しています。

 

味の素バイオファーマサービス 株式会社ジーンデザイン

 

味の素バイオファーマサービス オリゴ核酸供給体制

また体外診断用途でのPCR検査が増えており、それらに用いるプライマー(オリゴ核酸)のニーズも高くなっています。特に最近は新型コロナウィルスに対するPCR検査が急増しているため、オリゴ核酸製造に関する技術を通じた社会貢献のひとつとして、これらプライマーの製造は最優先で行っています。

 

不純物への対応が、オリゴ核酸の製造・品質管理の大きな課題

オリゴ核酸の固相合成では、固体の担体上で単量体(モノマー)の脱保護や連結などを繰り返していくことで、ヌクレオチドの鎖を伸長させていきます。そして、合成が終了したらアミン溶液中で担体から切り離し、目的物を得ます。固相合成の場合、途中で精製を行うことが難しいため、伸長反応が途中で止まっているものや脱保護に失敗してしまったものなど、多くの不純物がこの溶液中に入ってしまうことが、オリゴ核酸製造や品質管理における大きな課題となります。

とくに、核酸医薬としてオリゴ核酸を用いる場合、最終的には人の身体に投与することになるため、高いレベルの純度が求められます。しかしながら、核酸医薬品に特化した品質設計・管理に関する国際的なガイドラインは、整備途上にあります。ジーンデザインは、こうした不純物の管理に関する核酸医薬の規制整備に向けた国内での取り組みにも参画しています。

製造の面では、オリゴ核酸の不純物の種類の多さと、それらの性質がよく似ているということが、不純物の分離・確認の高いハードルとなっています。液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)による分析だけでは限界があり、複数のモードでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を組み合わせることが必要となります。南海氏は「逆相イオンペアや陰イオン交換、siRNAのような二本鎖核酸の場合はサイズ排除クロマトグラフィーを使うこともあります」と説明します。

こうした背景から、ジーンデザインでは、不純物の分離・確認に二次元高速液体クロマトグラフィー(2D-LC)の活用を模索しているといいます。2D-LCは、二つの異なる条件を組み合わせて分離性能を大きく向上する分析手法で、通常の一次元LCでは困難であった複雑な試料の分離・分析を実現するものです。

「移動相中に塩が含まれる場合などは通常の一次元LCではそのまま質量分析計に持ち込むことができません。そこで、一次元目で陰イオン交換やサイズ排除、二次元目に逆相系を設定し、質量分析計に直接接続した2D-LC/MSでの分析方法を検討しているところです」(南海氏)

複雑な不純物を効率的に分析する2D-LC

ジーンデザインでは、2D-LCにアジレントの製品を採用しています。もともとは他社製の2D-LCを利用していたといいますが、より高度な分析を行うために、2021年1月に正式な導入に至りました。

「以前から営業担当の方とお話しするなかで、アジレントの2D-LCに対して使いやすそうな印象を受け、いつか使ってみたいとは思っていました。アジレントのセミナーやユーザーミーティングなどへ継続的に参加して情報交換をしてきましたが、展示会でより細かい分析ができると知り、購入を決めました」(南海氏)

 

アジレントの2D-LCシステム

実際にアジレントの2D-LCを日常的に使っているという斎藤氏は、「特定のピークをさらに詳細に分析したいとき、分取LCで単離・精製してLC/MS分析するワークフローと比べて、2D-LC/MSでは少量のサンプルでかつ短時間で質量分析まで行えるのがメリットです。また、アジレント製の2D-LCは、一次元目の複数のピークを二次元目でより詳細に一度で分析できるので、使い勝手という点でも満足しています」と、その使いやすさと効率性を高く評価しています。

「一次元目カラムを通過するすべての溶液が、二次元目カラムに導入されるコンプリヘンシブ2D-LCと、一次元目カラムを通過する溶液の一部だけを二次元目カラムに導入するハートカット2D-LC――この両方を一つのシステムで実現します。また、1回の分析で狙ったところを確実に取ることができます。アジレントの2D-LCならではの特長です。」と斎藤氏が説明しています。

 

不純物確認の例(dsRNA):Comprehensiveモード

 

また斎藤氏は、アジレントの2D-LCを利用するうえで「メソッドや装置の設定が複雑になることがあり、不具合や疑問点が発生したときにはすぐに来て丁寧に対応してもらっています」と、サポート体制についても好印象を持っているようです。

 

国内外で加速する核酸医薬の研究開発に貢献

国内外で上市されている核酸医薬は現在まだ20品目に満たない状況ですが、近年世界中で開発競争が激化しており、日本でもデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療を目的とした核酸医薬が実用化されるなど、国内の研究開発の勢いも加速してきています。こうした背景を受け、南海氏は「オリゴ核酸の受託製造という立場から、核酸医薬領域でビジネスを拡大していきたい」と意気込みます。

また、国内の核酸医薬の研究開発をより拡大していくうえで、品質管理における規制整備にも力を入れていく必要があると南海氏は言います。そのために、オリゴ核酸における不純物の分析技術を向上させていくことは必須です。ジーンデザイン、そしてアジレントは、次世代医療の発展のため、品質の面からも核酸医薬に貢献していきます。

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